薬師仏殿には薬師瑠璃仏が祀られています。薬師瑠璃仏の全称は「薬師瑠璃光王如来」で通称「薬師瑠璃光王如来」、一般に「薬師如来」もしくは「薬師仏」と呼ばれています。東方浄土瑠璃世界の教主であり、菩薩道において十二誓願を立て、衆生を病から救い、疾患を治し、諸難を解消して人々に安らぎをもたらすと言われています。また、瑠璃の名を冠しているのは、瑠璃の透き通るような輝きで穢れの無い国土を表しているためです。
東方浄瑠璃世界の薬師仏と娑婆世界の釈迦牟尼仏、西方極楽世界の阿弥陀仏をもって「横三世仏」を成し、三宝仏とも呼ばれています。仏教では、薬師仏と阿弥陀仏は共に衆生の生死に関わる問題を掌握する二大法門と言われています。薬師仏法門も生の終点として浄土を提唱していますが、菩薩道において十二誓願を立てて、衆生を病から救うことを誓っているため、現生で薬師仏の加護を得て安楽と長寿、災厄の回避等、修行する上での数々の障害を免れることができると言われています。
仏教の経典に見られる「薬師三尊」(東方瑠璃世界三聖)とは、真ん中に薬師如来、左右にそれぞれ日光遍照菩薩・月光遍照菩薩が控え、無数の菩薩の上位者として、世の世尊を助け、仏教を守り、衆生を教化します。日光遍照菩薩はまたの名を「威徳金剛」と呼び、掌中に日輪を持ち、赤蓮の上に座しています。月光遍照菩薩はまたの名を「月光王」と呼び、左手に青蓮を持ち、上には半月が見られます。
薬師仏には様々な造形が見られ、『薬師如来唸誦儀軌』の中では、左手に薬器(薬壺)を持ち、右手で三界印を結び、袈裟を着て結跏趺坐のポーズで蓮華台に座しています。(如來左手令執藥器,亦名無價珠,右手另作結三界印,一著架裟結跏趺坐,令安蓮華臺。)薬師仏の肌色は多くが瑠璃の青色ですが、關渡宮の薬師仏は金色で、三法衣を身に付け、右手で三界印を結んで葉のついた「藥訶子」(薬草)の枝を持ち、左手の鉢には衆生の因果から生まれた病を治す妙薬と薬があり、金剛跏趺坐のポーズで蓮と月輪の台座に座っています。