「剪花」は台湾伝統建築に見られる装飾技巧ですが、「泥塑」「剪粘」「交趾陶」の三種類あり、木彫・石彫・彩色とあわせて伝統建築の装飾体系を構成しています。伝統的な廟建築の屋根には、色とりどりの生き生きとした人物や龍・鳳凰・花鳥が「剪花」で造られています。また、「剪花」は建築の「水車堵」「鵝頭墜」「龍虎堵」といった内壁や外壁にも施され、広く応用されています。
現在の關渡宮の広大な建築規模は、幾つもの時代を経て建てられたもので、屋根に見られる「剪花」の工法にも違いがあり、現在のものは「剪粘」の作品を中心に、少数の「堆花」や「交趾陶」の作品が見られます。全体的に關渡宮の装飾工芸は近代のものが多く、1950年代に主流であった「ガラス剪粘」はあまり見られません。後に主流となった「湳燙」(工場製品)は、媽祖殿・観音殿・文昌帝君殿・凌霄宝殿・天壇・山門等の屋根に見られます。
台北地域の寺や廟では、近代の修復工事において再び「碗片剪粘」(茶碗の原料を用いたもの)を用いるようになり、關渡宮もこのような風潮に従って、三川殿・龍門・虎門・拝殿・古仏洞・財神洞や媽祖霊験の事跡を刻んだ石壁等を修復し、「碗片剪粘」を特色とする廟となっています。また、關渡宮には古い年代に作られた「堆花」の人物作品が天壇正面や正面後方、図書館の正門等に見られます。このような壁面の「堆花」は日本統治時代に主流となり、1950年代の台湾を風靡したことから、關渡宮にも時代を反映した作品が残されています。