瑶池金母はまたの名を王母娘娘と呼び、伝説では玉皇上帝の「正宮娘娘」(正妻)であると言われています。道教の神仙系譜によると西王母という呼び名で仙女を統率し、号を「九霊太妙亀山金母」もしくは「太虚九光亀台金母元君」としています。王母娘娘は瑶池に住むとされていることから、瑶池聖母・瑶池金母との呼称もあり、他にも西華金母、金母娘娘、無極瑶池金母の呼び名がありますが、俗に金母、母娘と呼ばれています。道教では「西極全真万祖母元君」の尊称があり、全称は「上聖白玉亀台九霊太真無極聖母瑶池大聖西王金母無上清霊元君統御群仙大天尊」となっています。瑶池金母の仙階は極めて高く、「三清道祖」に次ぐとされ、三界十方の女神を統率し、女仙を代表しています。仙道を修めて昇天する際には、まず木公に参拝して金母に会い、九天に昇って三清に入り、元始天真に拝謁すると言われています。
瑶池金母は中国最古の女性神で、民間信仰で最も重要な女神です。元は漢文化圏の外にあった原始部落のトーテム信仰から始まり、幾度かの変遷を経て女神の首領へと変化しています。戦国時代から漢代初期にかけての書籍『山海経・西山経』の中では、西王母が獣人の姿をした神であると描かれています。(玉山,是西王母所居也。西王母其狀如人,豹尾虎齒而善嘯,蓬髮戴勝,是司天之厲及五殘。)戦国時代初年の『帰蔵』と漢代初期の『淮南子』では不死の薬を持つ吉祥の神へと変わり、先秦時代の『汲塚書』と『穆天子傳』では女性の姿になり、魏晋南北朝時代になると西王母はさらに女仙の首領としての地位を獲得します。
『漢武帝内伝』によると、西王母は長寿の道に精通した道教の女仙の頭領として描かれ、元始天王の弟子で元始天王の教えを受け、30歳位の見目麗しい女性の姿であることが描かれています。また、書中では西王母が武帝に対して教えを説いて、神書・神符を授かり、仙桃5つを贈ったとされています。このことから、東晋南北朝時代には上清派の道士が西王母を神仙系譜に取り込み、後世に見られる西王母のイメージがほぼ確立されます。宋・元・明代にかけては多くの文学作家が西王母と蟠桃(神話に見られる桃のような食物)会を主題として小説や戯曲を描き、中でも『西遊記』では王母娘娘が菩薩や緒仙を集い、瑶池で蟠桃会を挙行したところ、孫悟空が乱入して大暴れした物語は有名となっています。