三川殿は關渡宮正面中央にある最初の入口で、屋根は複雑で高大な「假四垂頂」(二つ屋根が重なり合ったように見える屋根)の造りを採用し、精巧な「剪粘」装飾が数多く見られ、關渡宮を代表する「碗片剪粘」の作品と言われています。また、屋根の大棟部分は社殿の崇高な地位を表すように高く造られ、上下二層の「西施脊」の造りを採用し、頂上部に位置する上層の大棟は相対的に小さく、「西施縫」と呼ばれる四つの穴が開いています。穴と穴の間には虎・豹・獅子・象の四獣が作られ、中央には麒麟が置かれています。上層と下層の境界線は瓦当と軒平瓦で装飾され、非常に丁寧な造りとなっています。
下層の大棟中央部分には、真ん中に南極仙翁を据えた八仙の装飾が施され、廟建築の大棟部分においては最も一般的な主題となっています。下方の「含霊堵」と呼ばれる部分には、水生生物を主題とした装飾が施され、生き生きとした魚・エビ・蟹・水草等が見られます。また、屋根頂上部両端には「翻身龍」(龍のモチーフ)が作られ、戦後に華麗な様式が主流となったことから、伝統的なものと比べてがっしりとした体型で巨大な造りとなり、屋根の輪郭にもより厚みが感じられます。
屋根頂上部中央には吉祥を象徴する「財子寿三仙」が見られ、はね上がった屋根両端の下にある「印斗」には、最もよく見られる龍頭の造形が用いられています。龍は伝統的に最も高貴な生き物とされ、皇帝の象徴として用いる図柄でもあり、廟は神明の社殿であることから、龍の造形を通じて尊い雰囲気を造り出しています。龍柱はその代表とも言えますが、「剪粘」においては屋根の両端に作られる「翻身龍」が最も大型で目立つものとなり、最高点となる屋根の輪郭を形作っていることから、屋根装飾の重点と言えます。
大棟中央は「八仙慶寿」をモチーフとしていますが、白鶴に乗った南極仙翁を中央に、左右両側に向かって四人の仙人が据えられています。八仙の物語は中国で長らく伝えられ、老若男女問わず、富貴や貧困の生まれでも、異なる社会階層の人々が最終的に仙人になる物語ゆえに、民間で広く受け入れられてきました。八仙は台湾でも普遍的な装飾のモチーフで、廟もしくは民家の正門に刺繍や絵画、彫刻の「八仙彩」が見られ、廟や先祖等を祀る祠の屋根にも「八仙慶寿」のモチーフが見られます。