三川殿から正殿へ進む通路は、一般的なロの字型の回廊ではなく、一直線に入口から三川殿を抜けて、正殿へとつながっています。正殿の土台は三川殿よりも高く造られ、入口には現代風の階段があり、表面に装飾は無く、薔薇色の花崗岩が使用され、近年建設されたものであることが窺えます。正殿の壁面は厚さ70センチ、内壁はコンクリート塗料で塗装し、それぞれの部屋(明間・左次間・右次間)の壁には信徒の需要に応じて光明灯が設置され、壁面に彩りを添えると同時に、天上に輝く星のように信徒を照らし、神々や菩薩の加護を受けられることを象徴しています。

  正殿は三川殿と同様の構造で、擱壁式の木と土のレンガの混合構造になっています。正殿中央の部屋(明間)の頭上には、上下水平になるように左右に柱が渡され、前後の棟は横架材で四角形の枠が造られ、螺旋状に「頂心明鏡藻井」(天井)へ向かって渦巻き、下は四角く上に向かって円を描く上円下方の形、いわゆる「闘八」様式で荘厳な雰囲気が漂っています。媽祖殿の両脇の壁には光明灯が設置され、祈祷消災に利用されています。一般には各神明や菩薩に近い場所ほど媽祖の庇護を受けられると考えられているため、参拝者の需要に応えるように各殿内の壁には明かりを灯す用意がされています。

  三川殿と正殿の間にある拝殿は、もともと吹き抜けになっていましたが、祭祀空間の拡大と参拝者の供物が雨天時に濡れることを避けるため、スチール製の屋根を増築し、両端は「山牆」を真似て造り、大量の「剪粘」(屋根装飾)を施して、視覚的に三川殿・正殿の延長であるかのように融合させています。屋根の下には、花の彫刻が施された供物用の質素な机が13台置かれ、参拝者との交流の場を設けると同時に、荘重な雰囲気を醸し出しています。

  祭祀空間は明間、左次間、右次間が主要な空間となります。明間は媽祖を祀っているため媽祖殿と呼ばれ、さらに「架内」や「神龕」(もしくは「神房」と呼ばれる神明を祀る場所)といった三つの空間に分けられますが、「架内」は正殿の中で最も天井の高い空間となり、媽祖殿両脇の壁には「光明灯」が設置されています。「神龕」の中央には主要な参拝対象である鎮殿媽が鎮座し、左右にもそれぞれ媽祖を祀っているため、媽祖ばかりの媽祖殿は大層壮観です。

  左次間は観音仏祖殿で、「神龕」の前には神卓と八仙卓が置かれ、神卓の上には花瓶と供物があり、八仙卓には幾尊かの神像が祀られ、果物と精進料理のお碗3つと、仏飯の茶碗が置かれています。神明の安座している「神龕」は五角形で後方の壁に沿って置かれ、上部の彫刻は透かし彫りと浮彫りの二種類の技法を用い、柱の接合部には「花籃」(花籠を模した飾り)と「吊筒」(提灯のような造形の飾り)が造られています。媽祖殿のような華やかさはありませんが、控えめな造形の中にも成熟した彫刻技術が見られます。右次間の文昌帝君殿も、観音仏祖殿と同じ造りになっています。