三川殿は「三開間」(3つの空間に区切られる)の造りですが、両側の翼門(龍門・虎門)を加えると実際は五開間で、70センチ高の土台の上に築かれています。通常、寺や廟の土台部分は一般の住宅建造物より大きく、床面は磨石を使用し、戦後の建築様式で建てられています。また、殿前には「露台」もしくは「月台」と呼ばれる正方形の台座が建てられ、關渡宮のものは三川殿の土台の延長上に造られて五角形を形成し、上には天公炉が置かれ、参拝に使用されています。

  三川殿の正面には大面積の石彫装飾が施され、龍柱・石獅子・門枕・石鼓等の創作工芸が見られます。關渡宮の石彫はこの上ないほど素晴らしく、丁寧に彫られた壁面の石彫には匠の技が光り、硬い石材で作られたにも関わらず、人物や花鳥は生命力に溢れ、人の柔らかい造形、今にも芳香が漂ってきそうな草花、目の前の鳥からも歌声が聞こえてくるかのようです。

  殿内へ通常は龍門から入り、虎門から出る形で出入りします。三川殿の龍翼門付近には参拝用の金紙と蝋燭が用意され、参拝者はそれらに見合った対価を各自で決めて支払います。左側の虎翼門付近にはサービスカウンターがあり、信徒からの問い合わせを受け付けています。殿内の構造は「擱壁式」と呼ばれ、横梁を「山牆」(屋根を支える三角形の壁)に渡す造りで、木と土のレンガを混用して造られています。「山牆」には「堆花」もしくは「堆灰」と呼ばれるコンクリート製の「泥塑」があり、一般には「龍虎堵」(左右の対となる壁)や「水車堵」(軒下の装飾壁)、屋根上に多く見られる装飾工芸品となります。關渡宮に泥塑の作品は少なく、ごく一部の壁面に施されているのみですが、コンクリート材ながらも、伝統工芸の精緻な作りはそのままで、大変貴重なものとなっています。また、三川殿中門の上部には螺旋状に渦巻く「頂心明鏡藻井」が見られ、龍門・虎門には横長の八角形の「藻井」があり、俗に「蜘蛛の巣」と呼ばれるように、大きさの等しい「斗」と「拱」を交互に積み上げて造られています。

  廟の正面から三川殿に入ると、目の前に「三開門」(三川門)があり、中門、左の龍門、右の虎門で横長の空間を構成しています。三川殿は東向きで、「凹寿」様式すなわち入口部分がコの字型で、軒下には「歩口廊」(ポーチ)があり、寿梁は屋根や壁に覆われることなくむき出しになっています。三川殿の龍門・虎門はそれぞれ独立して正殿へと通じ、龍門は観音仏祖殿、虎門は文昌帝君殿と向き合い、全て「凹寿」の様式で造られています。