關渡宮で使用されている装飾模様のうち、最もよく見られるのは「吉祥図柄」で、動物であれば「四霊」(龍・鳳凰・麒麟・亀)や「四獣」(虎・豹・獅子・象)、植物であれば「歳寒三友」(松・竹・梅)や「四君子」(梅・蘭・竹・菊)があります。他にも太陽・月・山・川・風・雲・氷・水・寿石・神木といった「自然模様」、円・方勝(二つの菱形が重なり合った図柄)・盤長・直線・六角・八角の「幾何模様」、福・寿・囍・佛・萬・人・丁・卍・回などの「文字模様」があります。また、神仙伝説や歴史物語の人物をテーマにすることもあり、例えば「和合二聖」(寒山と拾得)、「三星」(福禄寿)、四大天王(風調雨順)、「八仙」等が見られます。最も多様なのは「器物模様」で、吉慶を祈願する「祈求吉慶」(祈求吉慶と同音の旗・球・戟・磬が描かれる)、「八宝」もしくは「八吉祥」(犀角杯・蕉葉・元宝・書・画・銭・霊芝・円珠もしくは法螺・法輪・宝傘・白蓋・蓮花・宝瓶・金魚・盤長)等の吉祥物があります。
吉祥を象徴する装飾物の場合は、単体で意義を持つ以外に、他の物品と組み合わせて意味を構成する場合があります。同音の物で吉祥の意義を表す図柄によく見られる物としては、鹿(禄)、蝙蝠(福)、猫と蝶(耄耋)、金魚(金玉)、なまず(年年有余)、鯉(吉利)、旗・球・戟・磬(祈求吉慶)、蓮の花(清廉、泥中之蓮)、菊の花(吉祥)、鶏冠花(台湾語の成家立業と同音)、金木犀(貴人相助)、芙蓉(栄華富貴)、花瓶(平安)、胡蝶(幸福)、鵲(歓喜)、仏手柑(福気)等があります。
次に、「移情」と呼ばれる吉祥の表現があり、「鴛鴦」(仲睦まじく愛し合うさま)、「亀と仙鶴」(長寿の象徴)、「松」(常に青いことから長寿、衰えないさま)、「竹」(自己規律や保守)、「梅」(容姿端麗)等があります。「引申」(意義の延長)の表現には、「ザクロと葡萄」(多子・多孫・多財の象徴)、「寿石と霊芝」(長寿の象徴)、「桃と万年青」(長寿)、「牡丹」(富貴)等が見られます。他にも、神話を基にした「龍」「鳳凰」「麒麟」「瑤池金母」、もしくは伝説を基にした「堯」「舜」「禹」「和合二聖」があり、さらには「三国演義」「水滸伝」「竹林七賢」等の歴史物語を題材にしたものまで、装飾として施されています。
装飾の表現手法には前述の同音表現の他、寓意、比喩、隠喩、比類、各種図柄の組み合わせによる意義の延長表現等があります。よく見られる八仙の寓意は長寿を祝い、天官は福を賜うことを表しています。比喩には、仙桃・松・鶴を組み合わせて長寿を象徴し、「博古花卉図」(花瓶と草花の図柄)は四季に花開くことと平安・富貴を象徴しています。隠喩に関しては、蟹の甲殻から科挙に合格することを暗示したり(科甲)、羊を介して孝行を表現したり、八仙の持ち物に福と長寿の意味を込めたりしています。比類の表現方法には、芭蕉を清朗の例えとしたものや、寒い冬に聳える松を「常青」(常に青いことから衰えない様子)の比喩としたものが見られます。最後に、「組み合わせ」による表現手法としては、鶏頭花と鹿を組み合わせることで「加官晉祿」(出世・昇進の意)を表し、松竹梅を組み合わせて「歳寒三友」(人格者の比喩)や「良縁」を象徴し、芙蓉と牡丹もしくは鳳凰を組み合わせると富貴の象徴となり、カササギと梅を組み合わせて「喜上眉梢」(喜び)を表し、霊芝・松・仙鶴は「松鶴遐齡」(長寿の比喩)を、最も頻繁に見られる仏手柑・桃・ザクロの組み合わせは多子多孫多財を象徴しています。